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パットメセニー〘orchestrion〙

2010 年 6 月 12 日 土曜日

DSC02270DSC02274DSC02272パットメセニーの最新作
【orchestrion オーケストリオン】 のコンサート(すみだトリフォニー)を聞いて来ました。

『オーケストリオン』というのは、19世紀末から20世紀初頭に実在した、オーケストラの複数の楽器を同時に演奏させることができる大掛かりな装置で、シアターオルガンの概念を膨らませたようなもの。アコースティック楽器およびアコーストエレクトリック(音響電気)楽器を、 さまざまな機械による操作によってソレノイドや空気力学を用いて演奏しています。

その概念をパット流に再現し、コンピュータを用いたデジタルなモノではなく、極めてアナログなものとして作り上げています。

写真は、公演後だけ観客に撮らせていた時を狙って撮ったもの。パットの実演ギターは片付けてしまっていてありませんが、オーケストリオン装置の模様は分かると思います。
左上は、パットの特徴でもあるギターとのユニゾンによく使うパンフルートのような音色を、パイプオルガンの発想に模して、大きさの異なる瓶に入れる水量を変えることによって音程を変え、ビンの口を吹いてパンパイプのような音を自動装置にやらせている。このビン棚が左右に置かれ、さながらパイプオルガンの並んだパイプのように見せている。演奏中はどの音が鳴っているか分かるように、各瓶の上のランプが点滅!
右の写真の右端の縦のアルミ板には、弦楽器のポジションを押さえているような装置が付いていて、速いフレーズでそれが忙しなく上下に動き、ベースやギター、パット以外の弦を張った楽器の音を担当している。打楽器も、バスドラ、タムからシンバル、シェイカーやカバサまでもが一つ一つ吊ってあり、自動装置が叩いている。(強弱等も少し付くが、繊細さには欠ける)

作曲、電子オルガン(エレクトーン)を演奏しているものとしては、非常に発想が近いところで独りオーケストラをギタリストとして挑戦しているパットメセニーに非常に興味があり聴きに行きました。
ただ、、、これは、日頃からパットメセニーのファンでも意見が両サイドに別れそうで、両方の見方から書いてみようと思います。

【A】
人間として、これだけ夢にこだわって、それを実現させてしまう執着心と根気の良さ、行動力とマルチプレイヤーぶりに脱帽! 
ギタリスト、作曲家、パフォーマーとして、彼の頭の中のサウンドを、他人とのコラボレーションにより得て来た今までの作品とは異なり、他人に演奏してもらうのでは無く、全て独りオーケストラでどうしても再現したかった徹底振りの点には、作曲家としてもエレクトーンのための曲を創り演奏してきた私としても非常に理解出来るし、そのバイタリティや発想の豊さに拍手!!です。

【B】
音楽家として、独りで全てやることに執着した結果として選んだオーケストリオンですが、もの凄く手間のかかる装置作りの割りには、ハイハットの代わりに鳴らしたアンティークシンバルのような小さいシンバルの自動装置は、どうしても「おもちゃのお猿シンバル」に聞こえてしまうし、全音にマレットを配置した自動装置より打ち出されるマリンバやヴィブラフォンは非常に機械的なパッセージにしか聞こえず(初心者のDTMの打ち込みとあまり変わりない)、バスドラやスネア 等は強弱の段階が少ないためと、大掛かりな装置の為ライブハウスでは手狭もありクラシックホールで行ったため、音もぼやけた多い残響の上にパット特有のかなり多めのリバーブやディレイが重なり、ギターの音ももやけていて今一つ抜け感に欠け、音がどんどん重なって盛り上がっていくと、異なったグルーブ感を持った人間同士のアンサンブルで無いために生じる単調さが浮き出て来てしまい、少し空虚にさえ聞こえて来る。 
唯一、その場でギターで弾いたフレーズを一つ一つ自動演奏装置の楽器達にやらせ、音を重ねた上にアドリブが乗って行く即興演奏は非常に面白かったけれど。。。でも、普通のインプロビゼイションに生まれるであろう、他の楽器からのフレーズでの応答、会話は無いので、音数が多いのに音楽では行き止まり。に聞こえてしったのは私だけでしょうか?

たとえば、エレクトーンで言うと、パットと全く同じ野望で独りオーケストラ(もちろん、それだけの用途の楽器では無いが。。)を夢見て、如何に一つ一つの楽器の音が機会的に聞こえないように。と、それを昔はアナログ。今はデジタルの力を借り、楽器の研究、演奏者も鍛錬しているわけだけれど、、
指のタッチ(イニシャルタッチ は、鍵盤の打鍵のスピードを細かく感知して表現。アフタータッチは打鍵した後の音の長さ、強弱、音質をも繊細に表現)それ以外にも、ありとあらゆるリアルタイム演奏でどれだけのことが出来るか!!? を時間をかけて追求している。
同じような研究経過を辿り、昔、エレクトーンHX-1が出た時に外部音源も使って、手で弾ききれないオーケストラパートを同時に鳴らし、シンクロが微妙にずれて来て大変苦労したのを思い起こしました。  パットメセニーはライブ中、幾重にも重なった音のタイミングが微妙にずれて来た時には、そのパートを止めてしまい、他のフレーズを重ね直してました。。。

あくまでもアナログに拘ったために、職人的な専門職の人が行き着く贅沢な大人の遊びではあっても、今までの緻密なパットメセニーサウンドと比べると、この音のクオリティーを、「自動演奏で装置にやらせているから、、これくらいしか。。。」という妥協で済ませてしまっていいものなのか??  と、「自動装置でこんなに今までのサウンドが遜色なく再現された」にはどうしても思えなく、Aで述べた点は感服しますが、又、パットメセニーだからこそ、そこで満足したくなく疑問に思ってしまい、、、、色々と考えさせられたライブでした。